感動・涙・感謝

去る３月２３日、娘が小学校を卒業しました。

コロナ禍での卒業式であり、例年とは異なりとても簡素化されていましたが、それでも工夫を凝らした良い卒業式でした。

娘の担任は、７人お子さんを育てる父親でもあり、その愛情を教え子達にも惜しみなく注いで下さいました。

そんな素晴らしい先生ともお別れです。

娘は、卒業式では泣くのをこらえたものの、帰宅した途端に泣き出し、翌日も先生の写真を見てはまた号泣し、どうにも涙が止まりません💦

娘の人生において、先生は間違いなく価値ある出会いの中の１人となるに違いありません。

さて、卒業文集の中で、その先生が子供達に送ったメッセージは大人も励まされると思い、この場を借りてご紹介したいと思います。

投稿者：Chiさん

以下、先生のメッセージ、卒業文集より。

「自由と幸せについて」　６年３組担任

　卒業文集の担任の言葉を読む機会は人生で二度あるかどうか。一度目は卒業直後。二度目は、少し先の未来において、なんだか迷いがあるとき。だと思うので、これから二つのことを書き記しておきます。

　まずは、卒業直後のみなさんへ。みなさんの人生の道筋は無限に広がっていて、いくらでも可能性があります。このように書くと、大げさで白々しく感じられてしまいますが、一応本当です。令和の世の中は情報に満ちあふれているので、私が子供の頃（昭和）よりも夢を抱きづらくなったように思いますが、それでも、十二歳の今はまだ、三百六十度どちらの方向にも未来は広がっています。人様に迷惑をかけない限り、みなさんは自由なのです。

　ここで、疑問が湧いてきます。年を重ねていくと、自由ではなくなるのでしょうか。進学先が決まり、就職先が決まり、人によっては結婚して、子供が生まれたら・・・。どんどん自由ではなくなっていくのでしょうか。例えば、教師という決まった仕事があり、子供が七人もいる私は自由ではないのでしょうか。

　そうではありません。私は自由です。負け惜しみではありません。大人になると、自由の種類が変わるのです。教師という仕事の目的は、児童一人一人の人格の完成を目指すことであり、定められたカリキュラムがあります。しかし、そこに至るための道筋は一つではなく、自分なりの工夫の余地があります。また、日々の生活における時間の使い方やお金の使い方、人間関係の選び方や言葉の選び方に至るまで、自分の意思で判断し、選択しています。これらも自由と呼べるものでしょう。自分で判断し、選択する日々を重ねていると、「幸せだな～。」という感覚で脳内が満たされます。

　つまり、みなさんは、これからずっと自由です。そして、その自由は幸せへとつながっています。十二歳の今は、進路という大きな道を選ぶ自由が広がっています。その先、選んだ道によって、だんだんと一本道になったような気がしても、そこには種類の変わった自由が広がっているのです。この、自由に溢れた人生で、自分で考えて、自分で判断し、幸せになってほしいのです。どんな進路でも、どのような状況でも、自分で決めた道ならば、そこに自由は見いだせるし、幸せも感じられるはずです。

　そのために、学校の学習があり、活動があるのです。私は、自分がこれまでに様々な人から受け継いできた知識や経験、ものの見方や考え方をみなさんに伝えてきたつもりです。それはかつて司馬遼太郎が緒方洪庵の人生を松明（たいまつ）の火にたとえたように、私も自分の持つ松明の火をみなさんにずっと分けてきました。その火が大きく灯り、みなさん自身の未来をあかあかと照らしてほしい。そして幸せになってほしい。心からそう願っています。

　もう一つ、二度目にこの文章を読む人に向けて書きます。自分の持ち味に悩んだり、自己肯定感が上がらないときにぴったりですよ。

　あなたの得意なこと、好きなことを一つ思い浮かべてください。

　それは分数で表すと、何人に一人ぐらいのすごさでしょうか。例えば、クラスで四番目にバスケが上手だったら二十八人中の四番ということで、約分すると七分の一です。これで、バスケ界において、七人に一人しかいない存在ということになります。

　次に、別の得意なこと、好きなことを一つ思い浮かべてください。例えば、漢字が少し得意だとします。クラスで七位くらいだとします。そうすると、約分して四分の一です。

　このように、自分の得意なことや好きなことを次々に分数で表していくのです。

　　バスケが好き　・・・四分の一

　　漢字が得意　　・・・七分の一

　　下級生に優しい・・・三分の一

　　歴史が好き　　・・・五分の一

　これらの分数を全部かけてみましょう。四分の一×七分の一×三分の一×五分の一は、なんと四百二十分の一です。つまり、バスケが好きで漢字が得意で下級生に優しくて歴史が好きなあなたは、四百二十人に一人の存在ということになります。この調子でもっと探してみたら、すごいことになります。

　何かで一位にならなくても、いくつもの「好き」や「やってみた」のかけ算で、あなたという存在は、他の誰とも違う輝きを放つのです。テストの点数や収入など、数値で比較されやすいものが価値のすべてではありません。（大事ですが。）自分の持ち味に迷った時や、判断の材料が欲しいときは、小学生に戻った気分で立ち止まって、分数のかけ算をしてみませんか。幸せになるヒントがあるかもしれません。